布のつくるヒンドゥーとムスリムの社会関係 : インド、グジャラート州カッチ県のオダニー(被り布)の事例より
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概要
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本研究は、インド西部グジャラート州カッチの女性によって着用されている頭に被る布オダニーの着用に注目し、布の着用を通して作られるヒンドゥーとムスリムの境界について考察したものである。衣服が、着用者の属性を示し、コミュニティ間の境界を示す機能をもっことは知られている。しかし、コミュニティの境界そのものや、境界を指標する衣服は固定的ではなく、衣服の着用者の所属するコミュニティの外部との関わりのなかで変化してゆくものであるインドが英国の植民地から独立して以降、境界の明確化、差異化が進行しており、宗教的なアイデンティティの高まりや、宗教の違いによってコミュニティを区別することは、そのような変化の過程として捉えるべきである。オダニーは、婚家において女性が特定の姻族の男性から顔を隠すアンダルという既婚女性の慣習の媒体であり、その機能や意味はヒンドゥーとムスリムによって共有されていた。しかし、ここ50年ほどの間で、オダニー着用の方法や意味は、ヒンドゥーとムスリムで異なる方向に変化していった。その変化によって、ヒンドゥーとムスリムの境界は、衣服の違いとして明確になっていった。衣服による可視的な差異と境界の明確化と並行して、ヒンドゥーとムスリムという宗教の違いが、次第にコミュニティ帰属の最も重要な要素として人々に認識されるようになっていったのである。
- 2005-06-30