欧州における日系多国籍企業の海外子会社の強みに関する研究 : アンケート調査の結果をもとに
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概要
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多国籍企業が競争優位性を獲得、維持するためには、本国での研究開発や生産プロセスの革新にとどまらず、海外子会社が積極的に競争優位の獲得に関わっていく必要がある。ところが、これまでの日本企業の国際経営では、いわゆるワンウェーモデルとよばれる本国中心の国際経営がおこなわれており、多国籍企業としての強みを必ずしも活用してこなかったという。グローバルな時代にあって、日本企業も多国籍企業としての強みを活かすならば、世界各地に存在するさまざまな埋め込まれた知を活用することが、さらなる競争優位性の獲得につながると考えるべきではないだろうか。そこで海外子会社を巻き込んだ競争優位の獲得を考えるにあたって、まず本稿では海外子会社の強みについて検討をおこなった。すなわち、本稿ではこの海外子会社における活動に焦点をあて、アンケート調査の結果をもとに、海外子会社の強みと、それを獲得するプロセスについて考察することが目的である。本稿では次のようなことを論じている。まず、海外子会社研究に関して考察をおこなっている。ここではこれまでの研究を検討した上で、わが国における海外子会社研究があまり焦点を当ててこなかった、多国籍企業の外部ネットワークとの関係を取り込んだ研究フレームワークを構築している。すなわち、本論文では、海外子会社と本社、競争企業、サプライヤー、カスタマーとの関係を中心に海外子会社におけるイノベーションを分析することを研究のフレームワークとするものである。これにもとづき、日系多国籍企業の欧州海外子会社の強みに関するアンケート調査をおこない、その結果をもとに海外子会社の強みについて、次のような結果を得た。すなわち、(1)海外子会社の優位性の認識は、産業によって異なっている。(2)本社の海外子会社に対するマネジメントの姿勢が、海外子会社の優位性獲得の活動に影響を与えている。(3)欧州に埋め込まれた知を多国籍企業に取り込もうという意思が弱い。(4)現地の知を多国籍企業に取り込むための方法として、もっともよく用いられているのは人によるものである。(5)海外子会社の強みを多国籍企業全体の強みにするための仕組みの構築がなされていない。以上が、本研究から得られた知見である。
- 国際ビジネス研究学会の論文
- 2006-09-30