日系中小企業の中国における人財戦略
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概要
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中国経済の高度成長は1978年の改革開放政策から始まり,沿海都市部は外資企業を中心に安価で豊富な労働力を基盤にした輸出組み立て工場モデルによる発展をとげた。しかし急増した農村部から都市部への出稼ぎ労働者は、低賃金と劣悪な労働条件下で搾取されてきた。その後の中央政府による農村部への振興政策や、労働基準法執行強制などによる労働環境の改善などの結果、新世代の出稼ぎ労働者の意識が向上し都市部への出稼ぎが減少し労働力不足の問題が生じた。経済急成長がもたらした新たな経営問題は、賃金の上昇、労働力需給の不均衡、専門職および管理職の不足などである。その影響は日系企業の中国事業にも及び、従来型の低賃金と潤沢な労働力を基にした労働集約的生産の戦略優位性が限定的であることを示した。今後は国内市場の重要度がさらに高まり、人材不足環境の中における事業成長の鍵は新しい人材戦略にある。一般的に中国における日系企業の評価は、成功企業もある一方で一般に余り高くない。日系企業の低額な直接給与と、対外的企業情報の欠如がその原因である。社員を長期的に雇用し育成するという日本的経営の考え方と利点は十分に実現していない。今後さらに変化していく労働環境のなかで日系企業が競争力優位性を維持するには、日系企業の有利な特徴を明確な制度として確立し、中国人就業の好感度を高め、優秀な人材を集めなければならない。その先例は日本の優秀企業が日本において実践している人材育成と教育および長期雇用下での厳密な業績評価にみられる。それらの中国における応用としては、中国人個々の自立した価値観に対応し、目標設定と業績成果の厳密な評価と人事考課を行い、それを昇給と昇進に反映させる合理的な人材管理が必要である。
- 2006-09-30