岐路に立つ松下電器のグローバル経営(進化する国際ビジネス)
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概要
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松下電器産業(株)は創業80年以上の歴史を持つエレクトロニクス・メーカーである。世界各地に200社を超す海外現地法人を有し、2005年度のグローバル連結売上高は8.9兆円、営業利益率4.7%である。同社の過去15ヶ年間の売上高成長はほぼゼロであり、国内外の売上高構成比がほぼ半々である。中国、ASEAN、インドなど高い経済成長をほこる海外市場においてすら売上高の長期低迷は顕著である。一方、日本からシフトする中国、ASEANを中心とした海外生産は同期間に世界ベースで年率8.4%の高成長をみせている。同社の出荷所在地ベースの海外営業利益の3/4は生産拠点の集中するアジアで、米州、欧州の利益貢献度ほきわめて低い。松下電器産業(株)はこの21世紀初頭に於いてグローバル企業として持続的な成長性と強固な収益性をどこに求めていくのかが問われている。エレクトロニクスのどの事業分野で国際競争力を確保するのか、いわゆる事業の選択と集中の課題である。同時にどの国でどの地域で、自社の国際競争力を発揮して成長性と収益性を確保するのか、いわゆるターゲット市場の選択と集中の課題である。少子高齢化により成熟市場に向かいつつある日本という本国市場なのか、それとも米国、欧州といった先進国大規模市場なのか、それともロシア、インドといったBRICsに代表されるような新興市場や成長市場なのか。加速化するFTA(自由貿易協定)/EPA(経済連携協定)の締結をテコに益々相互依存度の高まる世界市場の中で、従来とは違ったダイナミックな地域戦略が模索される必要がある。選択した事業と地域のグローバルなマトリックス経営の中で同社はP/L、B/S、C/Fの最大化と最適化を実現する経営が求められている。これは多国籍化する企業の宿命的課題といえよう。そのためにはグローバルな視点からの新たな経営組織論、研究開発や物づくりのあり方、グローバルなサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)を更に高度化したマーケティング戦略、そして国際財務・税務の一本化した戦略、これらを実現せしめるための人材確保や国際人事のあり方の構築が実現の鍵となろう。今後打ち立てられるこれらの戦略が上手く機能する時に、同社は再び持続的な高成長、高収益企業に向かっていくと思われる。
- 2006-09-30