脂肪細胞における脂肪酸合成とレプチン分泌の関連性(内科学)
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概要
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脂肪細胞から分泌されるレプチンは,成長,泌乳,生殖などに関与する重要なホルモンである.単胃動物の成熟脂肪細胞では,マロニルCoAが細胞質内のエネルギー基質の流量に基づいて増減し,その変化に基づいてレプチン分泌量が調節されるという機構が提唱されている.そこで反芻動物の脂肪細胞にも同様な機構が存在するか,脂肪酸合成経路の途中のマロニルCoAからパルミチン酸を合成する段階を停止させて細胞質内のマロニルCoAを増加させる作用を有するセルレニンを用い,培養下のウシ脂肪細胞から培養液に分泌されるレプチン濃度に対する影響を調べた.黒毛和種牛由来の脂肪前駆細胞を天井培養法により得た後に,成熟脂肪細胞化させた.組換えウシレプチンを用いた高感度なラジオイムノアッセイ法により,培養液中のレプチン濃度を測定した.培養液中のレプチン濃度は成熟脂肪細胞の培養時間の経過に伴い有意に増加した.このような増加は,この培養脂肪細胞にとって主要なエネルギー基質であるグルコースの培養液中濃度が高いほど有意に促進され,グルコースの脂肪細胞内への輸送と利用を阻害する2-デオキシ-D-グルコースを培養液に添加すると有意に抑制された.またセルレニンを培養液に添加すると,レプチン濃度の増加は有意に促進された.以上の結果から,反芻動物のレプチン分泌調節においてもマロニルCoAが重要な役割を担っていると考えられた.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 2007-03-25
著者
-
相川 勝弘
畜産草地研究所
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角川 博哉
山口大学農学部獣医学科
-
木村 康二
畜産草地研究所
-
BLACHE Domique
西オーストラリア大学自然科学・農業科学学部
-
WILLIAMS Ian
西オーストラリア大学自然科学・農業科学学部
-
MARTIN Graeme
西オーストラリア大学自然科学・農業科学学部
-
角川 博哉
山口大学 農学部獣医学科
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