「鏡の中の女」から「森の女」へ-「三四郎」をめぐるささやかな断章-
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概要
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夏目漱石の「三四郎」では,美禰子と三四郎のきわどいやりとりが描かれている。美禰子は本来,「鏡の中の女」として存在していた。そのことが,作中でのしなやかな美禰子の特性を担保するものであった。しかし三四郎は最後までそのことに気付くことはない。結局美禰子は、自らを絵に定着させることにより,「鏡の中の女」がもつ多様性を捨て,「森の女」という単一性のなかに自身を封じ込めてしまうのである。本稿では「鏡の中の女」という視点から,作品を読み直してみた。