ロシア語の指小接尾辞と日本語の接頭辞「オー」の使用に関する対照研究
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概要
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現代ロシア語には、多くの生産的な指小接尾辞が存在し、主に話し言葉において頻繁に用いられ豊かな表現手段として役立っている。一方、現代標準日本語は、ロシア語とは異なり生産的な指小接辞を持たず、言語活動における指小接辞の果たす役割は極めて限定されている。しかし、だからと言ってロシア語のような生産的な指小接尾辞を持つ言語において指小語で表される意味ニュアンスが、現代標準日本語で表せないというわけではない。筆者の考えでは、少なくとも部分的には、そのような意味ニュアンスは別の言語手段によって表すことが可能である。小論では、その言語手段の1つとして接頭辞「オ-」を取り上げ、ロシア語の指小接尾辞との比較対照を試みる。実際に、ロシア語の指小接尾辞の使用と日本語の接頭辞「オ-」の使用には多くの共通点が見られる。小論では、この現象を、ロシア語の指小接尾辞と日本語の接頭辞「オ-」が共に親愛の情を表出する働きおよび丁寧さを示す働きの2つの働きを持ち合わせていることによるものであると主張する。日本語の接頭辞「オ-」は日本語学において敬語の接尾辞と見なされ、従来、その親愛の情を示す働きに関しては殆ど言及されてこなかった。しかし、実際には「オ-」は親愛表現として重要な役割を果たしていて、その使用は現在さらに広まりを見せているように思われる。一方、ロシア語の指小接尾辞は、「オ-」とは対照的に、形式張らない場面において親しい相手に対して用いられるのに相応しい接辞であり、典型的には、その使用によって親愛の情が示される。しかし、指小接尾辞にはそれ以外にも様々な働きが存在し、中でも相手に対する丁寧さを示す働きは、現代ロシア語の指小接尾辞の使用における重要な働きの1つとして挙げられる。
- 2004-03-22