海外における日本的労務管理 : スリランカのノリタケ・ランカ社を事例に
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概要
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スリランカでは、1978年からの新政府はNICs(新工業国・地域)に学び、国内の数箇所におよび自由貿易特区の設置を行うなど国家としての本格的な工業化を進めた。魅力的な優遇措置の影響もありそれ以降、海外からの直接投資と比例し、スリランカに流入する日本から投資も増大した。1977年までのスリランカ日系企業の主は貿易関連の支社で、製造業が稀であった。そのなかで、1973年という早い時期から製造活動を行っている日系企業として草分け的存在だったのは、名古屋に本社をもつ陶磁器メーカーのノリタケである。スリランカで最も長く操業している日系企業でありながら、ノリタケ・ランカ社は都市部から離れ、地方都市に立地し、地域化を進めている企業としても注目されている。日本的労務管理の海外移転可能性について議論が行われている中、この企業を題材とした事例研究は当分野にとって価値のあるものと考えた。筆者が2001年から数度にわたり現地で参与観察を行うながら得られたデーターをもとに原稿の執筆を行った。もし、日本的経営労務管理とは従業員採用から定年退職までの多数の経営慣行が互いに合理的かつ有機的に、あるいは数珠繋ぎ的に機能しているものとするならば、ノリタケ・ランカには同様なものは存在しない。しかし、長い歴史の助けもあってか、他の日系企業にはない日本的な経営慣行が多数見受けられる。たとえば労使間の画一的な経営慣行などを促しており、階層性の強いスリランカ社会としては画期的と言えよう。当社は、従業員の愛社精神を形成する上で成功しており、地域からも受け入れられた企業であることも特筆すべきだろう。最後に、ノリタケ・ランカは日本的労務管理の海外移転可能性の困難さを教えてくれる事例でもあり、同時に日本とスリランカという異なる文化の中で作り上げられたハイブリッドな経営システムとしても高く評価したい。
- 2006-03-07