川端文学の構造 : 時空間の分析を視座として
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概要
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川端文学に共通する特徴として、いままで「孤児根性」や<魔界>といったものが挙げられ、様々に議論されてきた。しかしそうした議論は、この作家の特異な経歴と安易に結びつけて論じられたり、作家の発言をそのまま援用しての分析が横行するなど、深化しないまま終息した感も否めない。<魔界>にいたっては、あれほど喧しい議論が展開されながら、その概念定義さえ定説をみていない。そうした一時の熱もさめ、このところ若手の研究者の台頭により、欧米の文学理論を下敷きにしたり、昨今の文化史研究の側面からのアプローチも増え、少しずつではあるが川端の文学世界の解明も進みつつある。本稿はそうした川端研究の現状を視野にいれながら、いまいちど川端の文学あるいは作品世界の基本的構造を分析したものである。分析概念としては、論者が以前から主張している<時間>と<空間>を中心として、戦前から戦後にわたる川端文学全体を概観し、そこに共通する特徴を分析し、川端文学の内実を解明するための一つの視点を示したものである。
- 桜花学園大学の論文
- 2003-03-31