留学経験とキャリア形成 : 日本人の外国大学卒者を例として
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概要
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本稿は,日本人外国大学卒業者(外大卒者)の留学経験とキャリア形成とのかかわりを,追跡調査の結果から探索的に考察しようとするものである。まず,調査の結果より,留学経験を自らのキャリア形成にとってプラスに影響し,将来的に見ても良い方向へ影響すると回答する者が多いことが把握された。しかし,すべての回答者が留学経験を生かせるような職業に就き,キャリアを積んでいるわけではなく,むしろ「逆カルチュア・ショック」を経験し,それを克服しながら企業社会に適応しようとする状況が浮かび上がった。さらに,外大卒者を特別視することへの疑問を述べる者もおり,大衆化する留学現象のなかで,外大卒者自身の考え方も大きく変化していることが示唆された。次に,英語の効用に関しては,回答者の多くが肯定的な認識を示し,英語力は,外大卒者を特徴づけるコンピテンスの1つとして,キャリア形成における差異化の有力な手段となっていることも把握された。その一方で,年月を経ることにより留学経験の「風化」が進み,キャリア形成とのかかわりが不明瞭となることも予想され,この「風化」を防ごうと試みられる帰国後の活動についても注目していかなければならないといえる。
- 桜花学園大学の論文
- 2003-03-31