胸腺外T細胞分化の機序
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概要
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免疫系において,細胞性免疫を担当するT細胞は,胸腺内でネガティヴセレクション,ポジティヴセレクションを受け,分化するといわれている。今回,KLH特異的マウス抑制T細胞ハイブリドーマよりクローニングしたT細胞抗原レセプターα鎖遺伝子(Vα14Jα281Cα)を用い,その分化機序について調べた。まず,BALB/c脾臓細胞のmRNAの頻度をVα14Jα281Cαをプローブとして用いたRNaseプロテクションアッセイ法で測定すると,約1.5%ものT細胞がこのα鎖を発現している事が判明した。BALB/c脾臓細胞におけるVα14陽性T細胞のホモジェナイティは,Vα14とCα特異的プライマーを用いたPCR法でも同様に証明された。すなわち,塩基配列解析の結果,22クローン中20クローンで,Vα14遺伝子断片はJα281遺伝子断片と遺伝子再構成して発現されており,それらは全く均一で活性のあるタンパクをコードしていた。次に,この現象の胸腺の関与を調べるため,ヌードマウスにおいて同様のことをPCR法を用いて調べた。その結果,胸腺がないヌードマウスでも,11クローン中10クローンは,BALB/c+/+と同様のVα14Jα281陽性α鎖であった。しかし,BALB/cの新生児マウスの脾臓細胞では,10クローン中4クローンしかこのVα14遺伝子断片がin frameにJα281遺伝子断片と遺伝子再構成していなかった。このことは,Vα14陽性T細胞が,単に胎生期T細胞レパトアを反映したのではなく,胸腺外で加齢とともにポジティヴセレクションされたことを示している。
- 千葉大学の論文
- 1991-12-01