心房のVulnerabilityの電気生理学的指標の検討 : 発作性心房粗細動発生の予測について
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概要
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種々の不整脈を有する患者82名を対象に,臨床的に発作性心房粗細動を有する群(AFF(+)群) 36名と有しない群(AFF(-)群)46名に分け,発作性心房粗細動の発生とよく相関する心房のVulnerability(受攻性)の電気生理学的指標を検討した。洞調律時,心房興奮開始時より冠状静脈洞遠位部までの心房間伝導時間は,AFF(+)群で100±23msec,AFF(-)群で83±15msecとなり,AFF(+)群で,有意に延長していた(p<0.001)。高位右房の有効不応期は,AFF(+)群で221±29msec,AFF(-)群で215±30msecとなり,両群間に有意差を認めなかった。Conduction delay zone(高位右房早期刺激法にて心房内伝導遅延が20msec以上遅延する連結期の最大から最小までの時間幅)はAFF(+)群で51±24msec,AFF(-)群で35±22msecとなり,AFF(+)群で有意に拡大していた(p<0.01)。Whyndham等の方法によるRepetitive atrial firing zoneはAFF(+)群で15±22msec,AFF(-)群で7±16msecとなり,AFF(+)群で有意に拡大していた(p<0.05)。高位右房早期刺激法にて高位右房の心腔内心電図の幅が,コントロールに比べ150%以上を示す連結期の最大から最小までの時間幅で表されるFragmented activity zoneはAFF(+)群で61±28msec,AFF(-)群で25±19msecとなり,AFF(+)群で有意に拡大していた(p<0.001)。各指標間の比較では,Fragmented activity zoneが,従来用いられていたRepetitive artial firing zoneよりsensitivity,specificity共に有意に高く,発作性心房粗細動の臨床像とよく一致しており,その予測に有用な指標となると考えられた。
- 千葉大学の論文
- 1990-04-01