脳腫瘍に対する術中照射療法の研究 : ベータトロン電子線1回大量照射のイヌの脳に与える影響について
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概要
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悪性脳腫瘍に対する術中照射療法で,重篤な合併症である晩発性放射線壊死を避けるために合理的な照射野と線量を選択する方法はまだ確立されていない。この間題の解決のための基礎研究として,ベータトロン電子線1回大量照射の犬の脳に与える影響を検討した。雑種成犬の3群(各4頭)に対し右頭頂部硬膜上に径2cmのベータトロン照射筒を置き,深さ1.5cmで30,40,50Gyとなるように11MeV電子線を照射した。2カ月,6カ月,12カ月,24カ月後に各群より1頭ずつCT検査を行った後に屠殺し摘出脳の組織学的検索を行った。30Gy群(I群)では14カ月後に不全片麻痺が出現。40Gy群(II群)では8カ月後に不全片麻痺が,50Gy群(III群)では6カ月後に片麻痺が出現した。II,III群の犬はいずれも15カ月後までに死亡した。CT検査ではI群で14カ月後,II群で12カ月,III群で6カ月後に壊死の所見を得た。単純CTでは照射野の腫大,脳室の偏位,対側脳室の拡大,造形CTで広範なび慢性不均一な増強効果を認めた。I群24カ月追跡例では壊死の所見は消失し,照射脳のCT所見は照射後の期間により変り得ることが明らかとなった。組織学的には各群とも典型的な晩発性放射線壊死を呈したが,壊死形成に先行する血管変化は認められなかった。壊死巣の拡がりはisodose curveをほぼ反映して15〜20Gyの照射を受けた領域に認められ,深さは3cmから4.5cmまで進展した。以上の結果から電子線エネルギーと照射野径を合せて考慮したisodose curveを設定し日標以外の部位では15Gyを越えない照射計画を立てることが必要とされる。著者はこれらの知見が悪性腫瘍に対する術中照射療法に少なからぬ寄与をするものと信じる。
- 千葉大学の論文
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