抗甲状腺剤治療による小児バセドウ病の予後
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概要
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抗甲状腺剤による小児バセドウ病の治療成績につき検討した。対象は1969年から1984年までの15年間に千葉大小児科を受診し,4歳から15歳までの間に抗甲状腺剤による治療を開始したバセドウ病113例で,すべて治療開始後3年以上経過観察した症例である。(1)抗甲状腺剤治療により50例(44%)が寛解したもの,14例が外科手術となったもの,34例が治療継続中のもの,2例が甲状腺機能低下を来したもの,13例が経過不明となったものであった。治療中止後再発は9例(15%)にみられ,再発はすべて1年以内にみられた。寛解症例での平均投薬期間は3年5カ月であった。バセドウ病の中には,甲状腺刺激作用をもった抗体の他に甲状腺抑制作用をもった抗体が存在し,それにより甲状腺機能低下をきたす症例もあった。(2)T3抑制試験における甲状腺放射性ヨード摂取率(TRU)の減少率とT4およびrT3減少率とは良好な相関をみた。T3抑制試験において正常に抑制された群のT4減少率は,抑制されなかった群のT4減少率にくらべ有意に大きかった。同様に,正常に抑制された群のrT3減少率は,抑制されなかった群のrT3減少率にくらべ有意に大きかった。寛解群のT4,rT3減少率の平均はそれぞれ32%と27%であった。T4およびrT3減少率を抗甲状腺剤治療中止の指標としたT3抑制試験においては,T4またはrT3減少率のおのおの単独よりもその両者ともが30%以上であったときに治療中止後の再発の可能性が少なかった。(3)小児バセドウ病の約半数は治療前に甲状線刺激ホルモン受容体抗体(TRAb)測定値が50%以上の高値を示しており,それらは約3年以上しないと正常値の陰性にならなかった。一方,治療前のTRAb測定値が50%以下のものは約1年以内に正常値の陰性となった。したがって,未治療時のTRAb測定値は,治療予後の予測となりえた。
- 千葉大学の論文
- 1989-08-01
著者
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