癌の病理学的,統計学的研究 : 特に誤診を中心として
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概要
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日本病理剖検輯報第9巻(1966年)から同第23巻(1980年)に収録された全剖検例(470,718例)の中から臨床診断,剖検診断のいずれか又は双方に肺癌・胃癌・肝癌・腸癌(結腸および直腸癌)の記載のある症例を抜粋して,特に誤診例について検討を行なった。誤診率について年次的推移をみると,肺癌および胃癌では誤診率の改善がみられ,肺癌の誤診率は1966年33.2%,1975年25.1%,1980年20.4%と減少しており,胃癌においては1966年26.9%で,その後動揺がみられたが1976年に21.7%となり,以降も同水準であった。肝癌においては誤診率の改善は著明で1966年に56.7%と高値であったが,その後漸減し1970年に48.7%となり,以降も改善は顕著で1980年25.9%となってきた。腸癌の誤診率は1966年29.3%で,その後もほぼ横ばいで,15年間で改善はあまりみられなかった。誤診の中で臨床診断名が各臓器癌で,剖検にて異なっていた例を誤診I (overdiagnosis),逆に剖検診断名が各臓器癌で,臨床において異なっていた例を誤診II (underdiagnosis)とした。誤診Iは肺癌・胃癌・腸癌において誤診の中で占める比率は低かった。誤診Iの多くは他臓器癌からの転移によることが多く,臨床的に診断が転移巣に惑わされた場合で,癌の発生部位の判定の誤りであった。肝癌においては初期には誤診Iが多くみられたが,年次的に改善が著しく,その内容も他の3つの癌と同様であった。誤診IIは誤診の中で多くを占め,肝癌においては肝硬変に合併した肝癌が臨床において単に肝硬変とのみ診断され,癌が見落とされる場合が最も多くみられたのが特徴的であった。他の各臓器癌では誤診IIの多くは誤診Iの時と同様に転移巣に惑わされる場合が多く,そのほか合併する他臓器疾患と診断されることが多くみられた。
- 千葉大学の論文
- 1987-06-01
著者
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