新しい酵素反応速度測定装置の試作とその検討
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概要
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従来とは異なる測定原理,"定反応量に達する迄の所要時間は酵素量に反比例する"による装置を試作した。検査室での従来からの酵素測定の一般法は,定時間までの基質変化量を測るので,えられた値が酵素量に比例しないことがしばしばある。本機による新測定法は次の如くである。基質緩衝液と酵素液(血清)を混和して測定セルに入れる。このセル中の反応混液の吸光度の変化を連続監視して,吸光度が0.001,0.003,0.01,0.03,0.1,0.3まで達する所要時間を0.1秒単位で打ちだす。この所要時間の逆数は酵素量に比例した数値である。本機の最大の特徴は,この"所要時間の逆数は,酵素反応経過の様式の如何にかかわらず,常に酵素量に比例する"ことにある。また定反応量を一つだけでなく,連続六段の吸光度にしたことにより,測定可能範囲,すなわち最低から最高値までの幅を,最低値の千倍以上に拡大しえたことも大きな利点である。精製酵素(ALP,LDH,GOT)の倍数希釈系列による基礎実験成績は,当初計画を満足するものであった。同稀釈溶液を用いた,本機と日立-726型とからえられた値はよい相関を示した。患者血清を用いての,両機からえられた臨床検査値については,ALPではよい相関を示したが,LDH,GOTは良好とはいい難い。本機は開発途上の試作第一号であるが,基本的な検討は本研究で略完了した。しかし実用機としては改良すべき点も多い。それらの諸点が解決するならば,検査室における有用な測定機となるに違いない。測定幅が非常に拡大して,測り直す要がなくなるから,迅速を要する緊急検査用としても大いに役立つであろう。
- 千葉大学の論文