細胞傷害性リンパ球によるラウス肉腫ウイルス変換細胞認識に及ぼすツニカマイシンの影響
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概要
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細胞の悪性変換に伴って出現することが知られている腫瘍関連移植抗原(TATA)は,主要組織適合抗原と共に細胞傷害性リンパ球(Tc)によって認識される。この認識に糖鎖が関与しているかどうかは不明である。本実験は,Rous肉腫ウイルス(RSV)変換B10.Aマウス細胞(S829BA細胞)を用い,Tcの抗原認識における糖鎖の役割りと,標的抗原の性質を調べることを目的として実験を行った。S826BA細胞をtunicamycin(TM)処理すると,S826BA感作B10.A Tcによる特異的^<51>Cr放出は未処理の90%まで有意に低下した。この細胞表面のH-2K^k,H-2D^d抗原量を間接螢光抗体法で定量したところTM処理と未処理細胞で有意の差は見られなかった。一方,H-2D^d感作B10.BR Tcによる特異的^<51>Cr放出はTM処理細胞で未処理細胞の30〜50%まで抑制されたが有意差はなかった。H-2K^k感作B10.D2 Tcによる細胞傷害作用は標的細胞のTM処理で影響を受けなかった。抗RSV血清を用い,間接螢光抗体法でS826BA細胞を染色したが,細胞表面にRSV構造タンパク質は検出されなかった。以上の結果より,S826BA感作B10.A TcのS826BA細胞認識において抗原の糖鎖が関与している可能性が示唆された。
- 千葉大学の論文