古墳時代親族構造論と古代国家形成過程
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概要
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九州大学では約3000体に及ぶ古人骨資料を所蔵している。それらは医学部解剖学第二講座の教官が、北部九州を中心とする西日本一円の発掘調査の現場に出向いて、調査・研究に当たってきた資料である。現在では比較社会文化研究院基層構造講座に移管されており、将来は総合研究博物館の収蔵品となる予定である。人骨の年代は縄文時代から江戸時代にわたるが、中心を占める弥生時代・古墳時代の人骨と、それに基く研究は、現在の日本人の形質的な特徴がどのように形成されてきたのか解明する上で、大変重要な役割を果たしてきた。それに加えて、1980年代後半から、当時解剖学第二講座に在籍した田中良之氏(現九州大学比較社会文化研究院教授)・土肥直美氏(現琉球大学医学部教授)が推進してきた、弥生時代・古墳時代遺跡出土古人骨の歯冠計測値に基く親族構造の研究は、まさに画期的なものであり、その成果は田中良之氏の著書『古墳時代親族構造の研究』(田中、1995)として纏められている。この研究の成果は、形質人類学・社会人類学だけにかかわるものではなく、日本における古代国家形成過程の研究にも重要な貢献をするものである。小稿では、Iで国家形成に関わる理論的諸問題を概観し、IIで田中氏の研究成果が従来の古代史研究にいかなる書き換えを迫っているかを明確にする。その結果、九州大学所蔵古人骨資料の日本古代史研究における重要性が、あらためて鮮明になるであろう。古人骨資料に基いた考古学・古代史学と形質人類学との学際的共同研究への寄与が、九州大学総合研究博物館での将来的研究活動の中核として期待されているのである。
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