芸術と創造的思考
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概要
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創造的思考は、芸術家を含めて、創作活動に携わる人にとってもっとも重要な思考形式である。本論文の目的は、創造的思考に関わる諸側面について心理学的に論考することである。論文は8つの節から成り立っている。第1節「思考」では、亀井勝一郎の見解が紹介される。かれは思考する姿としてロダンの「考える人」と広隆寺の「弥勒菩薩像」が西洋と東洋の思考する姿の典型と考える。第2節「思考の分類」では、ジョンソン・レアードの「思考の分類」を紹介し、創造的思考の思考全体における位置付けがなされる。第3節「チンパンジーの描画行動」では、チンパンジーも絵筆を持たせると画用紙に絵を描くが、幼児の絵と異なり、それには何をどのように描くかというイメージ、構想、意図がなく、単に絵筆を振り回しているに過ぎないと断定する。第4節「絵画療法」では、絵画療法の内容と、それが成り立つ要因について述べられる。第5節「天才」では、天才と呼ばれる人の制作活動を、エジソンの「天才とはインスピレーションではなく、パースピレーションである」という言葉と、棟方志功の制作活動を例に取って説明される。第6節「創造性テスト」では、創造性とは思考の柔軟性であって、そのためには常識に捉われない拡散的思考がなされなければならないことを主張し、そのための心理テストとしてTCT創造性テストを紹介する。第7節では、ウォーレスの創作活動の段階を紹介し、第8節では、遺伝因子と環境因子について言及し、創作活動をする者の資質が開花するためには努力することが肝要であると結論する。
- 2006-03-31