肥満症における内臓脂肪蓄積の臨床的意義とその成因に関する臨床ならびに基礎的研究
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概要
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肥満の合併症発症における内臓脂肪蓄積の臨床的意義を明らかにし,さらにその成因を,臨床的および生化学的,細胞生物学的方法を用い明らかにすることを目的とし検討した。内臓脂肪蓄積の指標として,肥満者の腹部CTスキャン臍部断面像における内臓脂肪(V)と皮下脂肪(S)の面積比(V/S)を用いると,V/Sは男性では女性に比べて高く,若年者に比べて中高年者で高値を示した。40歳以上の女性において高血圧,糖尿病,高脂血症,高尿酸血症の合併頻度を比べるといずれもV/S高値群で低値群に比し高かった。V/Sと空腹時インスリン値は正の相関を示し,インスリノーマの患者7例はいずれも内臓脂肪優位の脂肪分布を示した。天井培養法によりWistarラットより培養した幼若脂肪細胞の増殖は,皮下脂肪組織由来のもの(SF)が内臓脂肪組織由来のものに比べて速かった。エストロゲンは,雌のSFの増殖を促進させたが,雄のSFには影響を示さなかった。SFはインスリンにより増殖の亢進がみられた。Zucker肥満ラットより採取した内臓脂肪組織のインスリンによる中性脂肪合成能の上昇は皮下脂肪組織に比べてより亢進していた。以上のことから,合併症をもたらす病的肥満の本態は,『内臓脂肪蓄積症』という概念でとらえるべきであり,その成因には,加齢,性,ホルモン特にインスリンなどの脂肪細胞をとりまく環境要因に加え,内臓脂肪組織に存在する脂肪細胞の増殖と分化およびホルモンに対する感受性が皮下脂肪細胞のそれらと異なっていることが関与すると思われた。なかでも,インスリン存在下で成熟した内臓脂肪細胞の中性脂肪の合成が,皮下脂肪細胞のそれに比べて亢進する性質が,内臓型肥満症の成因として重要であるものと推測された。
- 千葉大学の論文
- 1993-12-01
著者
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