高齢者向け公営住宅における夏期の温熱対応と居住性評価 : シルバーハウジング「サンポエムひらかた」の場合
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
シルバーハウジングの居住者を対象に、高齢者にとって住みよい住環境とは何かを明らかにするために、身体的特徴や健康状態と居住環境との関係について、面接調査するとともに温湿度の実測を行った。その結果次のようなことが明らかになった。(1)本対象住宅居住者のほとんどが家族などの支援を得ずに日常生活が可能であるが、握力や片足立ちの値は小さい。(2)持病主訴率は高く、通院治療している者は全居住者の74%である。この結果は、今後の高齢者用住宅の立地条件として、病院などへの交通の便を考えなければならないし、また緊急時の対応のためのバックアップ施設の受け入れがスムーズにできるようにしておく必要性がある。(3)本対象住宅では、夏期の温湿度の実測値より得た不快指数では、過半数の者が不快を感じる温湿度条件下にある。しかし、居住者の住み心地評価では、過ごしにくいというマイナスの評価の割合が少ない。(4)住み心地評価では、風通し、明るさ、乾燥に対してよい評価が得られた。(5)クーラーの普及率は約半数であるが、実際にはクーラーの設置住宅の半数しか使用していない。(6)温熱環境の対応には、着衣によって対処しているが、特に神経痛や関節の痛み、身体のだるさ、腰痛などの自覚症状のある人がこまめに着衣量の調節を行なっている。今回の調査では、冬期の温湿度の測定、冬期の住まい方に関しての検討ができなかったので、さらに冬期のデータの補充を行ないたい。またどれくらいのスピードで高齢者の機能の衰えが進むのかを追跡調査を行ない、このシルバーハウジングの住宅計画や居住環境の整備に向けて検討していきたい。稿を終えるにあたり、調査に御協力下さいました大阪府営枚方交北住宅「サンポエムひらかた」の入居者の皆様および、施設長の川口様、LSAの佐竹様、高齢者住宅研究会の代表者で、研究指導をして下さいました兵庫教育大教授の菊沢康子先生、同研究会のメンバーである大阪コミュニティワーカー専門学校の青野香織先生、最後になりましたが、同研究会のメンバーであり、各種の便宜をはかって下さいました大阪府建築部の三崎様、増田様、大宅様、土木部の寺本様に感謝の意を表します。
- 1994-03-04
著者
関連論文
- 高齢者向け公営住宅における夏期の温熱対応と居住性評価 : シルバーハウジング「サンポエムひらかた」の場合
- 高齢者向き集合住宅のサニタリー空間に関する研究 : シルバーハウジングの事例調査より
- 高齢者向け公営住宅における居住性評価 : 室内環境と住棟配置・住戸配置・間取りとの関係
- 高齢者世帯の在宅生活を支援するサービス--シルバーハウジングにおける居住者ニーズと生活援助員の役割からみた提案