女子大学生の生涯体育指向の研究
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概要
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1.約85%の者が運動クラブの経験者であった。社会に出てから,または家庭に入ってからのスポーツ参加者は,過去の運動経験者達が非常に高い数値を示している。本報告においても質問13,生涯体育指向を持つ者は,過去において運動クラブの経験者が80%以上を占めている。これは,過去の運動経験が運動の楽しさを覚えさせたり,運動の必要性を理解させたり,さらには,運動の場ヘスムーズに解けこませる要因になっているものと考えられる。2.約65%の者が,健康・体力に対して関心を持ちながら,何も実行していない。この点については,今後の研究課題である。3.健康・体力を増進させるための具体例であるが,「睡眠や栄養,食事に気をつけている」という解答が多かった。しかし,それだけに止どまらず若い年代でもっと積極的に身体活動を通して,健康・体力の増進を計ってもらいたい。4.スポーツ技術の自己評価については,32.5%の者が自己を低く評価している。近年スポーツ種目の多種多様化に伴いスポーツの場面への参加する機会が,多くあると考えられるが,そのためには,ある程度の技術を身につけておくことが望ましい。5.身体活動の好き,嫌いは約76%の者が「好き」と答えているにも関らずスポーツへの参加率は低い。これは身体活動は好きであり,また健康であることの必要性も認めてはいるが,ライフスタイルの中に取り入れるほどの価値を認めていないものと考えられる。6.約40%の者が「好きでも嫌いでもない」「好きではない」と答えている。体育の指導者としては,多方面からこの40%の意味を考えてみたいと思う。7.教科体育が「将来役に立つ」と答えた者は,わずか58%であった。今日,教科体育の役割の一つとして,身体活動を通じての健康の自己管理があげられている。現時点では,十分健康でその必要性を認めないのであろうが,身体活動の必要性を伝え,教科体育の役割を認知してもらえるよう,一層より努力をしたい。8.家族の人のスポーツ実施状況は,「行っている」「行っていない」ともおよそ半分であった。実施しているスポーツ種目について,また,誰が多く実施しているか,今後の調査課題としたい。9.家族におけるスポーツ行事については,「過去においては行っていたが,最近は行っていないと答えた者が大多数であった。子供の成長に伴う諸条件が,家族でのスポーツ行事が実施できない要因になっているものと考えられる。10.スポーツ施設の現状と利用度については,生活行動範囲の中に何らかの施設があるようだ。井関の報告と比較してみると,全体的傾向には変化はないが,フィットネスブーム・テニスブームが反映してか,フィットネスクラブの数が増え,テニスコートの利用状況に若干の差がみられる。11.学校以外のスポーツクラブには,殆んどの者が参加していない。フィットネスブームで施設が増えている割には,意外な数値であった。また質問の中での"クラブ"の意味をもう少し明確にすれば,異なった解答が得れたのではないかと思われる。12.学校以外のスポーツ教室・講習会の参加についても殆んどの者が「参加していない」と答えている。参加を妨げる要因を追求することが,生涯体育への参加の足掛かりになるのではないかと思われる。13.生涯体育指向については,約93%の者が積極的に」または,「機会があれば,参加したい」と答えている。参加するためにも若い年代で基礎的能力をしっかりと身につけてもらいたい。14.生涯体育の実施形態では,野外活動,レクリエーション,行事的な催しを行いたいようである。15.現代社会のスポーツ環境に対する意見は,十分ではないようである。施設があるにはあるが,費用がかかりすぎる・施設の絶対数が少ないといったところである。以上の結果から,結論的に言えることは,健康・体力などに関心を示している。身体活動の好き・嫌いでは,多くの者が身体活動を好んでいることが分った。スポーツを行う環境においては,十分満足できる環境ではないが,悪くもない,といった所である。にもかかわらず,スポーツの実施状況では,大変低い数値を示している。スポーツは最終的に実施するか,しないかは個人の主体性によるものと考えられる。生涯体育指向,将来のスポーツへの参加型態からみれば,数値的には高い数値を示し,優秀ではあるが,内容面においては望ましい結果が得られたとは考えられない。我が国の生涯体育は,名前が先走りした傾向がみられる,もう一度その本質を我々指導者も見直し,教科体育が生涯体育への橋渡しになるように教授することが必要である。
- 1991-03-01