比較研究 : 日本の起業家と大企業管理職(経営,産業・経営における労働の諸問題)
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概要
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本論文は,日本における起業現象に関する心理学的研究の初期の成果を一部紹介するものである.起業家と大企業管理職との相異なる二つの主要な側面を明らかにするためにアンケートを準備した.第1に,個人差異指数(PDI)を設定するために,起業家と管理職との間の違いの認識を測定した.第2に,企業差異指数(CDI)を設定するため,起業家の企業と典型的な大企業との間の違いの認識を測定した.初期の結果から,調査対象の起業家と大企業管理職では,PDI,CDIとも前者の方が大幅に高いことが判明した.アンケート項目の因子分析を行ない,起業家・大企業管理職開の違いの認識に関わる4種類の因子を発見した.これは,各個人がコンセンサスに基づく意思決定方式よりも起業家的意思決定方式を選ぶ度合,回答者が内在的報償よりも外在的報償を選ぶ度合,回答者が機能指向の構造よりも営業指向の構造を選ぶ度合,回答者が企業の安定よりも成長を選ぶ度合の4因子である.起業家が起業家的意思決定方式,外在的報償,成長指向を選ぶ度合は著しく高かった.回答者の企業と典型的大企業との間の違いの認識についても4種類の因子が分析された.すなわち正規の手続きに従うよりも個人の判断を重視する意思決定プロセスを選ぶ度合,支持基盤構造へのアクセスの度合,技術管理能力の度合,ネットワークへの相対的アクセスの4因子である.起業家は,自社が個人主義的意思決定プロセス,支持基盤構造へのアクセスにおいて評価が高く,技術的能力において劣ると感じていることが判明した.起業家と典型的な大企業管理職との間に違いをもたらす主因子は,意思決定プロセスにおける個人の判断対正規の手続き尊重,外的報償対内的報償,支持基盤構造へのアクセス,ネットワークへのアクセスと判明した.
- 日本大学の論文
- 1991-03-01