女性の性役割認知
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概要
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成人女性の性役割観-男女それぞれが持つべき性質と果すべき役割についての意識-の実態を把握し,その規定因を探るために,質問紙調査の結果を分析し,次のような結果を得た。1.性役割区別の指標-男性より女性に多く期待されるのはどのような性質か,女性より男性に多く期待されるのはどのような性質か-は,青年期後期にほぼ確立される。2.しかし,いくつかの指標は,世代によって,指標として役立ち方の程度に差がある。そうした指標とは,主に男性役割としての自我の強さに関するものであり,年令の高い世代で役立ち方が大きい。3.職業活動は,性役割区別に影響を与える。特に,就労時間がパートタイム程度の量である人々において,区別を少なく見積ろうとする傾向が強くみられた。4.性役割期待-男性に望ましい性質・態度,女性に望ましい性質・態皮(男女で重なる部分がある)の主要なものとして,男性には社会的な成功に関わる性質,女性には,社会にこれから進出してゆこうとする積極的態度に関わる性質と家庭を守り愛情豊かである母性的性質の3つが期待されている。5.これら3因子の内,男性についての因子と女性についての母性の因子は,世代,結婚,子どもをもつこと,および職業によって影響を受けるが,女性についての社会進出の因子は,世代以外にはあまり影響を受けない。6.育児の責任と職業をもつことに関して,育児を重視する人では,母性因子とともに男性因子が高く評価され,伝統的な男女の役割分化の傾向がみられ,職業を重視する人では,男性の役割を比較的低く女性の社会進出の役割を比較的高く評価して役割を近づけようとする傾向がみられた。7.生き方において対人的価値志向の人の特徴は,伝統的役割分化を支持すること,社会的価値志向の人は,女性に母性と職業の両方の役割を求めることであった。
- 1984-03-15