TLOによる技術移転を活用する企業の特性と有効性 : 第2期科学技術基本計画を視野に入れての検証
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概要
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平成7年に科学技術基本法の制定に基づき科学技術基本計画(第1次:1996年〜2000年)が策定されて以降、さまざまな政策が実行に移されてきた。わが国の研究開発カや産業競争力の低下が懸念され、その回復に向けての政策であった。80年代にバイドール法などによる技術移転政策と産学協同システムで成果あげた米国をモデルとして、わが国においても産学協同のシステム化が推進され、本年度より科学技術基本計画も第2期(2001年〜2005年)を迎えるに至っている。なかでも、98年の「大学等技術移転促進法」によるTLOの設立と活動が産学協同のシステムにおける中核的な役割を果たしている。TLOは、大学内の研究成果を特許化し、企業へライセンスしていく機関である。2001年9月末の段階で24の機関が承認され活動を展開している。TLO以外にも、国立大学には「地域共同研究センター」が61校に設けられており、企業の共同研究は1999年度で3129件(89年度に比べて、4.4倍)に及ぶ(日経朝刊平成13年5月28日付け)。そうした仕組みは、企業の競争力の強化に向けての新しいストラテジーを実現する枠組みであり、筆者はTLOなどを軸とした産学協同システムを研究開発戦略にどう組み込むかが企業の競争優位に向けた重要なテーマであると考えている。産学協同システムを研究開発戦略における1つの具体的有効手段と位置付け、大学等の研究成果をアウトソーシングしていくモデルの構築と実行こそ、次世代の戦略シナリオといえる。大学発のベンチャーが注目され、技術移転を対象としたベンチャーフォンドの設立なども相次いでおり、戦略シナリオを実行に移す環境は整いつつある。本稿では、TLOの役割や技術移転の意義をはじめ、それを活用した企業側の研究開発ならびに製品開発戦略の有効性(問題点や課題も含めて)を事例中心に検証しようとした。2001年より第2期の科学技術基本計画が実行に移されつつあり、政府の研究開発行政や新産業・新市場創出に向けての施策は、予算面でも格段に大きな規模となり、目標や重点分野も絞り込まれてきている。そうした情勢を視野に入れながら論及していくものである。
- 2002-02-28
著者
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