1730年以降のポウプの風刺対象の変化
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概要
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Alexander Popeの風刺対象は1730年を境に変化している。それ以前の作品が主にへぼ作家を視野に置いた文壇風刺であるのに対し、1730年以降、詩人はより広く社会一般に見られる悪弊に筆誅を加えるようになる。このような変化を最も如実に表しているのがThe Dunciadではないだろうか。この作品に関しては、一応4巻構成という体裁をとっているものの、その風刺対象は最初の3巻(1729年出版)と第4巻(1742年出版)との間で大きく異なっている。1730年以前に書かれた前3巻が文壇風刺であるのに対し、第4巻の風刺対象は1730年代に出版されたImitations of Horaceと総称される一連の作品群のそれに近くなっているのだ。さらに、風刺対象の変化は風刺技法の変化も引き起こした。The Dunciad最初の3巻においては、モック・ヘロイックという技法がフルに生かされているのに対し、第4巻ではそのような技法は放棄されている。換言すれば、前3巻は作者と読者が共に属する文壇という世界を扱っているため、読者に新たな情報を提供する余地はなく、作者は既知の情報を斬新な手法で伝えることに活路を見出しているのに対し、第4巻では、一般の人間を読者として想定しているため、表現面で奇を街うことなく、ストレートに主張を伝えようとしているのである。そこに、晩年「楽しませるためでなく、何か役に立つため、何か善を為すという目論みを持って書くべき時だ」と心中を吐露した風刺詩人としての作者の成長を読みとることができる。
- 龍谷大学の論文
- 2005-09-30
著者
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