中国巨大資本主義の登場と21世紀の世界(1) : 中国・アジア産業と代表的企業の活動は何を達成しつつあるか
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文は,先に刊行した拙著『中国巨大資本主義の登場と世界資本主義』(2005年8月,批評社)が提起した問題を引き継ぎ,その後の半年間の経過を踏まえて,現代のリヴァイアサン・中国巨大資本主義の登場が,21世紀の展望をいかにして現実的具体的に切り開きつつあるのかをあらためて考察する.なぜなら,中国巨大資本主義の登場の意味は,一般的にはまだ理解されていないからである.したがって,本論文の考察の重点は,前著に引き続いて中国・アジア産業とそれを代表する企業の産業面・実体面における活動が,新産業革命と新情報革命に対して何を達成しつつあるかを,具体的に確認することに置かれている.第1節は,中国巨大資本主義の登場が,20世紀社会主義の破産の世界史的結果であると同時に,これまでの世界市場システムを根本的に変化させる巨大中国世界市場の登場を意味しており,これによってヨーロッパ・アメリカシステムとしての資本主義の行き詰まりによる混迷を激化させていることを指摘した.したがって,古典経済学から宇野純粋資本主義に至る抽象的一国資本主義的なモデル設定は,その意味を理解できない.またヨーロッパ資本主義の歴史的産物が前提する市民社会的モデルにはコミュニティという観点が欠如しているため,中国型社会を理解できない欠陥を持つ.第2節は,中国自動車産業とそれを代表する中国国内国外企業の最近の動きを検討し,中国自動車市場が世界を代表する小型車とその販売競争・価格競争の場へと転じつつあることを見る.関連して,中国金融市場改革の遅れは,自動車・住宅金融の未発展の原因となり,中国産業の発展に対応していないが,一面においては中国「社会主義市場経済」という政治的看板のための遅れであることを見た.第3節は,中国巨大資本主義の内部に生じている変化を,(1)農業税全廃に見る中国農業社会の矛盾,(2)内陸部の工業化と物流システムの変化,それによる労賃上昇や労働力移動の変化,総じていえば中国巨大資本主義の内部に生じている変化であること,(3)それが中国の大学の変化にも反映していることを論じた.第4節は,(1)中国ディジタル家電の起動,(2)新情報革命についての日本の解釈の分極化,(3)流通産業における新情報革命の影響などを考察した.第5節は,(1)日本の中国認識の狭さと現実への立ち遅れ,(2)中国産業に対してすでに特化した韓国産業・台湾産業と比しての日本産業の課題,(3)世界の側から中国巨大資本主義の登場を捉えなおす必要をあらためて説いた.続く第2章では,分散・並列・ネットワークシステムについてあらためて論じる予定である.
- 2006-03-20