ヘーゲル国家論の原理とその形成 : 「市民自治」と「市民倫理」
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概要
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ヘーゲルの国家論が「市民自治」と「市民倫理」を原理とし、それにおいて形成されているということを、『人倫の体系』、『ドイツ憲法論』、『イエナ5・6年草稿』、『精神現象学』、『法哲学』の叙述を追うことで論証したのが本稿である。『法哲学』を除く4著はイエナ時代のもので、それゆえこれらは人倫国家実現を目指すヘーゲル国家論の習作をなすわけである。この4著では人倫国家の展望として「市民自治」と「市民倫理」を原理に具体的な形で考察されているが、国家論としては体系性を欠いている。それに対し『法哲学』は、この研究成果の上に立ち国家論として集大成し書かれていく。以上のことを本稿の基本概念である「市民自治]と「市民倫理]に引きつけて言えば、まず、市民自治を市民の「己における構成」と概括し、市民が国家構成を問題にする姿を考察する。次いで、その際に市民が国家構成を自覚するあり方を市民倫理という形で克明に跡づける。市民倫理とは本来的には「人倫国家」における市民の「徳」ということであるが、この徳を、市民自治を実現していく中で市民が自ら自覚するものという意味での「市民倫理」の必然性の契機にする過程が叙述されている。この過程を具体的に追ったのが本稿である。
- 2006-01-10