5040 Valery : Eupalinos管見(歴史・意匠)
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概要
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本篇はポオル・ヴァレリーPaul Valery(1871〜1945)の著作である「ユウパリノス」:Eupalinos ou l'Architecteにつきその建築論的概念を述べんとしたものである。周知の如く、本書はプラトンの対話篇にヒントを得て書かれたものときれており、その文体は対話であり、冥府におけるソクラテスとパイドロスとの亡霊の対話dialogueを通じて建築を語つている。その当初の発表は1921年であり、これの単行書としての刊行は1923年といわれる。作品を知るにはその背景を、特にそれを著わした作者を知る要があろう。然るにこの場合、ヴァレリー詩文の難解性には定評がある外に、これらの作品よりもこれを書いた「人間」の方が常により大きいとする見方が存在する。従つて私の様な門外漢がこの作品を云々するのは無謀の誹りを免れぬ。然しながら本作品における建築の根柢的概念、並びに芸術作品の制作l'executionに対する著者の考え方等は建築に関わるものにとり、決して無縁なものではない。またその詩人としての、作家としての声名に対しそれぞれの分野から飜訳はもとより、数々の批判が或いは伝記的に、或いは専門的になされて来たことも事実であろう。然なしがらそれらの専門は主として文学者若しくは哲学者の側の専門であり、建築分野からの応答は森田博士「ユウパリノス」要約の外類例を求め得ない「ユウパリノス」又はヴァレリーに対する興味の増大にせかれ、非力をも顧みず私は上述を手掛りにこの「ヨーロッパの知性」にアプローチしてみたく思つた次第である。
- 1960-10-10
著者
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