機能的視点に基づくリテール金融業務展開
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概要
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近年,金融の諸機能に焦点を当てた,機能的視点の重要性が注目を集めている。世界的に地理的統合や情報技術革新,規制の緩和・撤廃が進み,経済環境が大きく変化する中で,金融分野における従来の業態や組織形態,制度を概念の土台とせず,金融機能を軸とする機能的視点の提示する枠組みの有効性が認められてきている。金融の諸機能についての詳細は,個々の金融機関にとって目新しいものではないが,枠組みをどのように捉えて実際の業務展開に取り入れるかは金融機関ごとに異なる。厳しい規制の中,個人向け取引を始めとするリテール業務に積極的に取り組んできた米国金融機関は,具体的な組織や制度を前提としながらも,その根底にある様々な金融機能をきめ細かく顧客ニーズに結びつけ,収益を上げることに成功している。金融システムの多面的な機能を軸とし,地理的,時代的な制約にとらわれない枠組みを提示する機能的視点は,リテール業務の展開に今後も重要な指針を示すものである。依然として収益面と顧客満足の双方で課題をもつ日本国内の大手金融機関による展開についても,有益な示唆を与えるものと考えられる。
- 2005-06-30