予備的貯蓄とケインズ型消費関数(<特集>ケインズ経済学の再検討)
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概要
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本稿の目的は,動学的最適化問題に基づいた消費の決定理論とケインズ型消費関数の関係を明らかにすることである.特に,不確実性の消費に対する影響を明示的に分析したバッファーストックセービングモデルにより,ケインズ型消費関数の再解釈する.ケインズ型消費関数はその静学的な側面を,恒常所得・ライフサイクル仮説として定式化された動学的消費決定モデルによって批判されてきた.しかし,不確実性を導入した恒常所得・ライフサイクル仮説であるバッファーストックセービングモデルによって,ある時点での所得には「不確実性がない」という将来の所得にはない固有の性質があることが示された.これは,所得と消費には,恒常所得・ライフサイクル仮説の指摘する生涯所得を通じた関係に加え,不確実性の減少を通じた時点内の関係が存在することを意味する.すなわち,この関係により,ケインズ型消費関数的な関係が存在することが明らかにされたのである.
- 東京大学の論文
- 2006-03-30