CAP(共通農業政策)の転換とフランス農業セクターの統治システムの解体 : 加盟国政府の対応戦略と政党政治(<特集>欧州統合と民主的統治)
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概要
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1992年のマクシャーリー改革に始まるCAPの構造転換によって,農業省と農民組合FNSEAの「共同管理(部門別コーポラティズム)」を基盤とするフランスの農業セクターの統治システムはおおむね解体するに至った.価格支持から直接援助への切り替えが経営規模や作物毎に異なる諸利益をFNSEAが統合する能力を失わせたためである.これは,ヨーロッパ統合の深化が加盟国の統治構造(governance)に重大な変容を齎した例と捉えることができる.何らかのCAP改革が不可避であったとしても,なぜこのような帰結に至ったのかは,EUレベルの制度についても,フランス農業の統治システムについても,決して自明ではない.本稿は,加盟国政府や政党などの国内アクターの対応戦略に着目し,CAPの制度改革とフランス国内の農業セクターの統治システム再編の相互作用を描いた.その結果,FNSEAの急激な後退には,80年代以降,政権交替が頻繁となったこと,70年代以降,社会の諸組織が広く党派化されていたことの相乗効果が決定的だったことが示された.
- 東京大学の論文
- 2006-01-31