有機溶剤使用職場におけるポータブルVOCモニタによる有機溶剤個人曝露測定
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概要
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一般に,有機溶剤取扱い作業者の個人曝露濃度測定には,固体捕集後ガスクロマトグラフによる分析法が利用されている.しかしながら,この方法では,作業時間中の平均的曝露濃度を算出することは可能であるが,瞬間的な高濃度曝露や,時間的な濃度変動を把握することは不可能である.最近,住宅室内や学校の教室等で揮発性有機化合物(VOCs)のスクリーニングのためにポータブルVOCモニタが使用されるようになった.このVOCモニタは光イオン化検出器を内蔵し,気中VOC濃度をリアルタイムに測定することが可能である.著者はVOCモニタが有機溶剤個人曝露濃度をリアルタイムに測定可能であるかを検討した.まず,実験的に各濃度段階の各種有機溶剤標準ガスを作製し,パッシブサンプラーとVOCモニタで同時に測定し,各種有機溶剤とそのVOC濃度との相関を検討して換算係数(CF値)を算出した.その結果は,メチルエチルケトンのCF値は0.5952,トルエンは0.4418,N,Nジメチルホルムアミドは0.9017であった.更に,各濃度段階の混合有機溶剤標準ガスを作製し,パッシブサンプラーで得られた各種有機溶剤濃度に前述のCF値を乗じたVOC推定濃度とVOCモニタで測定したVOC濃度との相関を検討した.パッシブサンプラー捕集による混合有機溶剤標準ガス濃度のVOC推定濃度と,VOCモニタで測定したVOC濃度は有意な相関を認めた(p<0.001).次に,有機溶剤を使用している合成皮革工場の男性作業者37名を調査対象とし,パッシブサンプラーとVOCモニタを用いて有機溶剤個人曝露測定を行い,その際,作業者に追随し全作業内容を記録した.パッシブサンプラーで得られた各種有機溶剤濃度に前述のCF値を乗じたVOC推定濃度とVOCモニタで測定したVOC濃度は有意な相関を認めた(p<0.001).VOCモニタはリアルタイムに結果が得られ,作業内容と照らし合わせることにより高濃度曝露を受ける作業を特定することができることから,作業環境改善,作業改善に有用な情報となる.VOCモニタは,有機溶剤個人曝露濃度測定において有用であると考える.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 2006-11-20
著者
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