間伐が樹冠の安定性に及ぼす影響の予測
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概要
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間伐方法が樹冠の安定性に及ぼす影響を知るために, 林冠動態モデルを用いて, 16種類の間伐を実行した場合の間伐後の樹冠の安定性の変化をシミュレートした.樹冠の安定性の指標として, 個体の全着葉重量の重心の高さと重心の偏倚量を用いた.モデルの実行結果から以下の知見を得た.1)間伐強度は樹冠の安定性に大きく影響した.間伐率が大きいほど樹高成長に伴う重心の上昇は抑制された.したがって, 強度の間伐によって樹冠の垂直的な安定性が維持されるものと考えられる.また間伐率が大きくなるにつれて間伐後5年間に重心の偏倚量が変化した個体の割合は多くなった.2)上層間伐と全層間伐は他の間伐種に比較して重心の偏倚量を減少させる効果が大きかった.他の個体を被圧するようなサイズの大きな個体の伐採が樹冠の安定性の維持に有効であることが示された.3)列状間伐は他の間伐種に比較して個体葉重量に及ぼす影響は小さかった.このことから, 列状間伐には林分密度管理図を基礎とした間伐率の計画は適切でないと考えられる.4)列状間伐は重心の偏倚を増大させるため, 樹冠の水平的な安定性は失われやすかった.
- 鹿児島大学の論文
- 1998-03-31