南九州地域に生育する広葉樹材の利用開発 : VIII.イジュ材の材質特性と用途について
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概要
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イジュ(Shima wallichii ssp.liukiuensis Bloemb)は, 奄美大島を北限とし, 南限は沖縄本島, 久米島, 石垣島および西表島までに分布しているツバキ科ヒメツバキ属の常緑高木である.本研究は奄美大島にある岩崎産業株式会社社有林(天然林;鹿児島県大島郡住用村および大和村)より採取した樹齢約90〜95年生のイジュの基礎的材質と, 今後に期待される有効利用について検討した.供試木は4個体で地上より20cmのところで伐倒した.元玉4mの横断面水平(半径)方向における物理的性質(生材含水率, 気乾比重, 平均年輪幅および収縮率)および機械的性質(曲げ破壊係数, 曲げ弾性係数, 衝撃曲げ吸収エネルギー, 縦圧縮強さ, 板目面と柾目面のせん断強さおよび割裂抵抗)を求め, これらの樹幹内の横断面半径方向の変動を検討した, これらの結果を含めて, イジュの今後の用途について検討した.結果の大要は次の通りである.1.樹幹内横断面半径方向の生材含水率の変動は髄に近い部分で約85%, 樹皮に向かってやや減少し, 最も樹皮に近い部分で80%程度を示すが, 樹幹内生材の平均含水率は85.4%であった.2.気乾比重は0.61〜0.70が最も多いが, 平均比重は0.74(上限値0.81,下限値0.59)であった.また, 同科同属のヒメツバキの比重より低いが, 南九州に多くの蓄積量を有するイタジイ, タブと同程度の比重を示している.3.接線方向の全収縮率, 気乾収縮率および気乾状態までの1%あたりの収縮率はそれぞれ10%, 5%, 0.8%を示し, これらの値をイタジイと比較すれば, 比重が低いにもかかわらず大きい値を示した.4.本実験で得た機械的性質を, 同じ程度の比重を持つイタジイ, タブノキ, ケヤキなどのデータと比較すると, 試験項目により若干の差はあるが, ほとんど同じオーダーの値を得た.したがって, イジュの利用について考えると, 上述した樹種と同じような取り扱いをしても良いと考えられる.5.イジュの用途は従来と同様にシロアリ防御のために土台角としての利用拡大はもちろん, LVLの原材料およびフローリング用材, 家具用材, さらに発想を転換することによって乾燥に伴うねじれなどを利用した雑貨, 器具の製作などへの利用も可能と考えられる.
- 1988-03-15