『源氏物語』における「物の怪」
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概要
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本稿は、「物の怪」と「いきすだま」の、『源氏物語』全巻での出現状況を調査した上で、『源氏物語』の「物の怪」を考察することを目的とする。そのために、まず、『源氏物語』の中から「物の怪」と「生霊」の全用例を抜き出して、巻序に従って一覧表を作成した。その結果、「物の怪」は『源氏物語』の中で、全体に偏りなくどこにでも現れているわけではなく、大よそ、三つの群にまとまって出現していることが分かった。『源氏物語』五十四帖のうち、第四の「夕顔」巻から最終の「夢浮橋」巻まで、「(御)物の怪」は、物語の巻頭近く、中間、末尾と、物語全体の構造の中で、全体構想と深いかかわりを持つ形で出現している。その点から考えると、物語全体を貫くテーマの一つであると考えられる。特に、六条御息所関連の「物の怪」については、用例数も多く、『源氏物語』において「物の怪」の代表的な例として描かれていると考えられる。源氏を愛した六条御息所は、生きている時生霊となり、死んだあと死霊となって、源氏をとりまく女性たちを恨み、取り殺し、その運命を左右していく。きわめて印象に残る人物である。
- 2006-03-01