宗教的世界における師と弟子の関係について : キェルケゴールと親鸞の場合
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
キェルケゴールによれば,宗教的真理とは人間が自己の存在をかけて獲得すべき主体的な真理であるから,認識者はその真理の圏外に立つことは許されず,その内側に在って真理そのものを自己有化(Aneignung)しなければならない.したがってそのような主体的真理は,人から人へと直接的に伝達可能な客観的真理ではなく,人間が神と単独で向き合う中で,神から人へ分ち与えられるような真理でなければならない.キェルケゴールはこのような立場に立って,宗教的真理における間接伝達(indirekte Mitteilung)の思想を構築した,従って,もし人と人との間に師と弟子という関係が成立するなら,「それは神に対する裏切りである」と断定し,人が人に宗教的真理を教えるということの不可能性を追求した.一方,親鸞もまた宗教的真理を主体性の中に見出そうとした人であった.彼は,仏のさとりである真理とは何であるかより,その真理が自己自身とどのように関係するかを重要視した.彼は真理とは仏と自己との真なる関係(呼応・相応の関係)によってのみ仏から賜るものであって,人から人へと相承できるものではないと説いた.本稿はこのような両者の共通点に着目しながら,宗教的世界における師弟関係について論述したものである.
- 2006-03-31