日本のものづくり その精神背景を探る
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
日本の工業製品は世界的に高い評価を得ている。その要因は品質、性能、耐久力、デザインなど一般に技術力の高さとして認識されている。ただ、筆者がプロダクトデザイナーとして二十五年に渡りものづくりに関わってきた立場から見ると、技術以前に日本人に共通する独特な精神風土が活かされていると考えている。これにはものづくりに対する姿勢やこだわり、歴史的に培われた価値観、社会構造から形成された労働意識など日本人の精神を形成する様々な要素が含まれる。森林に覆われた自然条件からは自然を尊重する心、そして木を加工し精妙な工芸品を生み出す手技が養われた。また資源に恵まれない自然条件は質素倹約の精神を育み、小さいもの、古びたもの、質素な中に抑制された美意識を見出す侘びの価値観に昇華されるに至った。和を尊ぶ精神風土はチームワークで品質向上に取り親む基盤となっている。最小限の資源投入で最大の価値を生み出す日本のものづくりは、地球資源の枯渇がさけばれるようになった今、持続可能社会を実現する上で一つのモデルになると考えられる。
- 2006-03-31