熊本八代方言から日本語を見る : 主格の「が」・「の」をめぐって
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概要
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本論は日本語において共通語だけでは理解できない問題を解く手がかりとして方言研究の知識を適用する試みである。考察では、主格表示の「が」と「の」について、特に「が/の」の交替に焦点を絞り、Harada(1971)の議論に熊本八代方言の事実を交流,させつつ、最近の「主語移動説」に対して「基底生成説」を再考する。この方言は大主語に「が」を、叙述主語に「の」を区別して用いるため、「が/の」の交替に新たな見解をもたらすことになる。分析から、第一に、主文は「NP-の」の「NP-が」を越える移動が許容しないのに対し、関係節は「NP-のNP-が」の語順が可能であること、第二に、関係節の主語の位置に再叙代名詞が生起できること、が明らかになる。その結果、問題の「NP-の」はDPの指定部に基底生成されたNPに属格の「の」が付与されたもので、埋め込み節の主語はゼロ代名詞のproであることを主張する。したがって、「が/の」の交替はpro-drop現象に係わる事実として捉えることができよう。このような成果を踏まえ、統語理論と方言研究との交流の必要性と重要性を強調する。
- 2006-03-31
著者
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