女性の年金,世帯単位から個人単位へ : 第3号被保険者制度の問題を中心に
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概要
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アマルティア・セン(Amartya Kumar Sen)のケイパビリティ(Capability)を,「潜在能力」と訳すか「生き方の幅」と訳すかはともかく,多様な生き方の自由を保障すること,そのために1人ひとりの自己実現能力を社会が支援すること,こういった社会的配慮が今日の我が国には欠けている.経済的には豊かなはずの日本,しかし閉塞感と不満が鬱積する社会.これを可能性に満ちた明るい社会に転換することが求められている.そのために欠かせない作業の1つが,多様な生き方を保障し,多くの人びとの自己実現を図る観点から,この国の社会制度を検証することであろう.わが国では,社会保障制度をはじめとする社会制度が女性のライフスタイルの多様化に対応できなくなっている.さまざまなライフスタイルを選択する女性の間で不公平感が広がっていることから,個人の多様な選択に中立的な制度を構築するため,既存の制度の改善を図ることが急務となっている.本稿では,多様なライフスタイルの選択にとって障壁となっている社会保障制度を取り上げることとし,なかんづく公的年金制度の第3号被保険者制度について,負担と給付の在り方を,個人単位か世帯単位かという観点から,問題点の整理を試みようとするものである.なお,女性と年金の問題については,遺族年金制度,夫婦の年金分割,出産・育児に係る対応といった論点も存在するが,ここでは,主として第3号被保険者の問題を考察することとする.
- 跡見学園女子大学の論文
- 2006-03-15