保健・医療・福祉「複合体」と市民との関係性についての一考察 : コミュニティワークの視点から
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概要
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保健・医療・福祉複合体は、自己の組織拡大によって、地域ケアネットワークを自己完結的に形成する。「複合体」による地域ケアの支配が進むと、本来行政が担うはずであった地域ケアネットワークの組織管理が「複合体」に移譲され、それに伴い、官僚的性格をも「複合体」は帯びてくるようになる。自己のネットワーク内部での患者の"たらい回し"の問題は、このことから説明することができる。「複合体」の組織構造は、単一施設からなる医療機関とは異なり、グループの本部機能を担う中枢組織によって、全体論的意志決定が担われ、サービス提供現場はその意志決定によって管理される存在となる。しかし、サービス提供現場では、利用者の個別性を考慮せざるを得ず、グループ中枢との間で一定の緊張関係が生まれる。一方、複合体では院長・施設長もグループ中枢の管理下におかれる。そのため、市民は、管理される存在であるサービス提供現場との関係しかもちえず、自らに提供されるサービスの範囲を超えて、地域における保健・医療・福祉の全体像に関わる発言をするためには、集合し組織化される必要が生じる。保健・医療・福祉を中心としたコミュニティワークの今日的課題として、筆者は市民の組織化と同様に専門職コミュニティの組織化および両者の共同が重要であると考えるが、この課題は、上記のような考察から説明することができる。
- 首都大学東京の論文
- 1999-03-25