紀伊半島中央部の秩父帯に産する含ケルスート閃石メタガブロ
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概要
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紀伊半島中央部の秩父帯にケルスート閃石を含むメタガブロが12地点で露出する.メタガブロは灰白色の層状チャートに貫入する長径数10メートル未満のストックまたはシート状の岩体である.チャートとなだらかな凹凸面で接し,ときに境界面は不規則にいりくんでいる.チャートのブロックがメタガブロに捕獲されている場合もある.メタガブロの縁部は暗緑色のガラス質となり,ときに幅1cm未満の白色ガラス質部が境界にみられる.これらの産状はメタガブロが半固結または未固結のチャートに貫入したことを示す.角閃石のK-Ar年代は220±5.9Maを示し,放散虫化石によるチャートの年代(トリアス紀中世〜ジュラ紀中世)と調和的である.メタガブロはおもに自形のケルスート閃石,チタン普通輝石,アパタイト,半自形の斜長石および鉄チタン鉱物で構成される.ときにケルスート閃石がチタン普通輝石をとりまいて成長する.斜長石の核部はソーシュライト化し,縁部はアルバイトに置換されている.緑泥石,緑れん石,アルバイト,スフェーン,イルメナイト,アクチノ閃石などの変成鉱物がみられ,緑色片岩相またはそれ以下の変成作用を受けていると推定される.メタガブロはアルカリ成分(Na_2O+K_2O=1.9-6.8wt%),P_20_5(0.6-1.0wt%),Nb(66-113ppm),Zr(262-414ppm)などに富む.五番関メタガブロが地質帯の境界断層にともなうテクトニックブロックで,角閃岩相の変成岩に対比される可能性は低い.五番関メタガブロは秩父帯のチャートに貫人する緑色岩であり,HFS元素の特徴などから海洋島アルカリ玄武岩マグマ起源のものである可能性がある.
- 2003-03-15
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