電磁気学の新体系
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概要
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物性研究40-5(1983-8)435-473発表の新体系物理学,"New Frame in Physics"の,電磁気学領域を詳細に解説するものとして,本英文報告を発表させて戴く。重要な概念の変更として,電子の古典像はもはや点ではなく,10^<-2>Å程度の大きさの永久電流であることが述べられる。この新しい考え方は,東京大学理学部物理学教室の人達に対しては,既に周知されていると言える段階にあり,明瞭な反論があれば戴ける状況と考えているが,いまのところない。原子核研究所の平尾泰男教授は明確に,古典的には電子が点でなく,10^<-2>Å位の大きさを持つとすることに対し,実験的な反証は全くないと明言されたことを附記する。なお,高エネルギーの電子-陽電子,電子-電子衝突の実験などにおいて,その衝突断面積から,剛体球の立場で予想される大きさが,10^<-17>m以下であるという話は,素粒子物理学的な,粒子間反応の確率の問題である。新体系物理学の立場は,こうした実験と異なり,いわば超低エネルギーの物質現象の領域を取り扱うもので,電子は不生不滅の実在と考えるものである。10^<-17>mでは電気エネルギーだけでもmc^2の10^3倍にもなり,無矛盾のマクスウェル・ローレンツ電磁気学を構成することが,原理的に不可能である。10^<-2>Åの永久電流としての電子は,もし衝突させると,ソリトンの様に,重畳した上で,元通りの姿で,動くと考えることもできるし,スピンが平行ならパウリの原理が働いて,もともと重畳できないし,もしスピンが反平行であれば,互に回転して,二枚の無限に薄い円盤が,平行にすれ違うというイメージを考えることも可能である。また古典像は,量子物理学的実体である電子の性質のすべてを説明できる筈のないことは,もちろんである。新体系物理学の立場は,c一数方程式としての古典物理学を完結させるために,電子の最善の古典像を得ることであって,それはマクスウェル・ローレンツの微視的古典電磁気学を無矛盾に成立させると共に,その体系はマクスウェルの巨視的電磁気学の基礎となることが期待される。電子の永久電流モデルは幸いにして,この要求を十分に満足させたのである。なお,電子の持つ,スピン磁気能率の値|g|eh/4mcは,非常に大きいもので,相対性理論の枠組みを使う以上,光速度c以上の速度で動く電荷を考えることは禁止されるが,電荷(-e)をその極限の速度cで動かした上でも,上記10^<-2>Åの大きさが,最小限必要になることを注意する。詳細は本文,及びAppendix Aに説明される。さちに本文で重要な点は電磁エネルギーと電磁運動量の移動関係の矛盾のない記述である。この課題は,いわゆる現存の物理学では未完成であったところで,ランダウ・リフシッシはその「場の古典論」の中で,同語反覆を行って,お茶を濁していることを注意させて戴く。これは電子を点と考え,自己エネルギーの無限大を内蔵した既存の物理学では避けられない矛盾点であったが,新体系物理学は,電子の永久電流モデルをその基礎に取ることによって,その困難を解決したものと考えている。なお,物性研究誌上での近藤淳氏との紙上討論は終了し,マイスナー効果は永久電流を維持できる体系の古典物理学的性質であることが確立され,新体系物理学はその基礎固めを終了して,発展の段階に入ったことをこゝに宣言させて戴く。
- 1984-09-20
著者
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