アルカリ金属イオンと希ガス原子の低エネルギー衝突による自動電離過程の研究(修士論文(1983年度))
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概要
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我々の研究室では,5,6年前より重粒子(アルカリ金属イオンと希ガス)の低エネルギー衝突についての研究が行われ,いろいろな衝突系について測定・解析がなされてきた。本論文の第1部では,加速されたイオン(アルカリ金属の一価イオン)と原子(希ガス)の衝突過程で形成された自動電離状態が崩壊する際に放出される電子のエネルギースペクトルの測定について報告する。実験は,イオンの加速エネルギー400eV〜8keV,観測角度25deg〜150deg,放出電子のエネルギー0〜30eVの範囲で行った。本論文では,特に,Rb^+-Ar系ならびにCs^+-Kr系におけるスペクトルの衝突エネルギー及び観測角度依存性について解析した。スペクトルの位置や形状の衝突エネルギーや観測角に依存した変化の原因は,重粒子衝突特有の運動学的効果(Doppler effect)と入射粒子と標的粒子間のクーロン相互作用によって放出電子分布が変化する現象(Barker-Berry-effect)の2つと考えられる。後者のBarker-Berry効果は,電子衝突においてはPCI効果(Post Collision Interaction effect)と呼ばれ,詳しい解析が行われてきた。しかし,重粒子衝突では,同時におこるDoppler効果が現象を複雑にするためにこれまでに詳しい解析が数列しかない。本論文ではDoppler効果の取り扱いを改善し,2つの効果を同時にとりいれた分布関数を用いて計算を行い,実験のスペクトル全体を再現した。その結果,Barker-Berry効果の式の中の未知数である自動電離状態(Rb 4p^5 5s^2 ^2P_<3/2>及びCs 5p^5 6s^2 ^2P_<3/2>)の寿命を求めることができた。(3500(a.u.)及び3300(a.u.))第2部では,励起断面積測定のために改造したイオンー原子衝突実験装置と新しく製作したエネルギー分析器について述べ,予備実験の結果を報告する。なお,本研究の一部は,既に日本物理学会,国際学会及び以下に示す文献で発表されている。
- 物性研究刊行会の論文
- 1984-08-20
著者
関連論文
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