アレキサンドリア(エジプト)と上海(中国)における外国人居留地の時系列的発展の比較研究
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概要
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本論は,アレキサンドリアと上海における外国人居留地の時系列的発展の比較を目的とする。比較は,1855年,1927年,2001年の時点を取り上げ,1)都市構造,2)不動産の所有と用途,3)市当局の政策と規制の三つの観点からなされる。1855年から1927年にかけて大きな変貌を遂げた外国人居留地の開発は,アレキサンドリアでは「保険計画」によって,上海では「租借」特権によって支えられた。これらの独自な制度は,前者では「コンソール広場」の周囲に「ガレリア」タイプの建物,後者では外灘周辺に高層ビルの建設を可能にし,こうして形成された外国人居留地は植民地支配の拠点となった。両都市は,都市構造,社会経済的構造の相違によって異なる開発過程をへたが,2001年の今日,共通の問題に直面している。すなわち,外国人居留地は「民族化」によって国有地とされ,そこでは「家賃統制」のもとで建物の投機的な利用が進み,建物の劣化が,様々な都市規制とあいまって,地区景観の大きな変容をもたらしたのである。そして,本論の結論では,都市保全のためには,保険制度の導入と,不動産に対する政府規制の解除が必要であることが指摘される。
- 日本中東学会の論文
- 2002-03-31