英語学習者の自律を促すタスク
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概要
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言語学習者が自律し、自分の学習に責任を持つことの大切さは、近年、研究者たちによって指摘されてきたテーマである。そして、学習環境が自律をサポートするものであれば、学習者の、何かを学びたい、といった内発的動機が高められるという、学習者の動機と自律との深い係わりも論じられてきた (Deci & Ryan, 1985, 2000 ; Dickinson, 1995)。ここではまず、言語学習における学習者の自律理論の先行研究から、自律という概念の歴史的背景や、解釈の推移を比較対照する。そして次に、学習者が、授業時間以外に、決まったパートナーと、一ヶ月間英語で e-mail を交換し、そのダイアログの抜粋を集めて、クラスの文集を作り、その文集を読んで感想を英語で書くという一連のタスクから、学習者が自分の学習にクラスの一員として、またパートナーへの責任を負いながら、英語という目標言語を道具として使い実際のコミュニケーションを体験することのダイナミズムを検証する。学習者は、英語で表現するテーマを自らが選ぶ、decision making に参加することで、認知的動機づけが高められると指摘されている (Dickinson 1995 : 165)。ペアー・ワークで作成したダイアログで、クラスの文集が完成するため、学習者は、パートナーとコミュニケーションをとる、という責任に加えて、クラスという社会の一員としての責任をも負わされた。パートナーとの e-mail の交換は、選んだテーマに関して自分の書きたいことを目標言語で表現することや、相手の考え方、英語での表現の仕方に触れる機会を作り、それは、学習者の自律と関係深いといわれる社会的な学習ストラテジーの使用にもつながった。学習者の、文集への感想も紹介しながら、彼らがこのタスクからどのような体験をし、感想を抱いたかを交えて、自律研究の今後の課題についても論議する。
- 大東文化大学の論文
- 2004-03-10