CIMの動向と今後の課題 : ある重工業メーカーの事例をもとに
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概要
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製造業は国際化/多角化し、顧客ニーズは多様化/高級化し、消費者主導型の生産を迫られている。この様な環境下、販売・設計・生産の各部門単位の情報システムがある程度整備されると、各部門相互間や企業全体の経営戦略に焦点を合わせたCIM(Computer Integrated Manufacturing)の構築が急務となる。本稿では、現状のCIMの動向・支援技術等を、ある大手重工業メーカーの事例に基づいて紹介し、CIM化の問題点・ポイントとして次の事項を挙げた。(1)構築のアプローチ面:◎業務自体の効率化・標準化、要求定義の明確化等の重要性、◎帰納的アプローチと演繹的アプローチ、トップダウン開発とボトムアップ開発等開発方法や組織体制面からのポイント、◎効果の見積と評価のポイント(2)サブ・システム別に見たCIM化のし易さ・し難さとその原因についての分析 また、今後の対応について、CIM化し難い分野のシステム化対策を次の様に行う。(a)定まった処理手順は決まっていないが、明示的に表現された知識を利用して結論を導き出す様な業務には、エキスパート・システム(AI)を活用すると、スケジューリング、故障診断、設計支援、FMSダイナミック・スケジューリング等、処理手順が複雑で、熟練者の経験的知識に頼っていた分野のシステム化が可能となって来るし、システム開発の生産性向上も期待出来る。しかし、大型コンピュータでもCPU負荷、メモリー容量、応答時間等が問題となり、今後、EWS、パソコン等の分散型機器で現場対応出来るよう、ハード面の性能アップが必要である。(b)一方、FAシステム機器やFA・LAN、ダイナミック・スケジューリングや適応制御等基盤技術の実現可能性、適用方法等を十分調査し、採算性を考慮した適切な自動化機器の「組み合わせFAシステム」とそれを制御する情報システムをMAP仕様のLANで結ぶ「究極のCIM工場」構築といったFMSの本格的な取り組みをプロジェクト組織で早期に着手すべきである。開発の生産性向上の対策としては、CIM構築も情報システムという製品(商品)を製造する作業であるから、ソフトウェア・エンジニアリング環境(プロセス、手法、自動化)を整え、ソフトウェア生産自体のCIM化をはかるべきである。また、従来の人間行為をCIMにシステム委譲した結果、業務転換・組織形態の変化が起こり、働く人の知的労働の質的向上を余儀なくされるため、CIM教育を徹底し、導入後の有効活用や今後の定着・発展を図れる優秀な経営・管理者、業務担当者、CIM推進技術者を育成し、特にCIO(Chief Information Officer)やシステム・インテグレーターの育成・確保は急務である。さらに、人間行為のCIMへの委譲に際し委譲の正当性を問い、委譲されるシステムの定義は、例外への対応も考慮して明確化し、演繹的アプローチで整理しておく必要がある。