奨学金政策と大学教育機会の動向
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概要
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近年、教育コストの増大と国の財政難のために、多くの国で、高等教育費の私費負担が拡大している。日本も授業料が上昇傾向にあるから、中高年層の経済状態が悪化すれば、家庭の所得による教育機会の格差が拡大することが懸念される。そこで本論では、文部科学省が実施している「学生生活調査」を用い、最近の大学教育機会の動向を検討した。分析の結果、90年代には家計所得による在学率格差が拡大したが、2002年以降、私立大学で低所得層出身者の在学率が伸び、所得階層間の格差が縮小するという意外な動きが確認された。これには、私立大学に通う低所得層の学生において、奨学金受給率が急速に伸びていることが関係している。このことから、拡大した奨学金が、機会の均等化に寄与していると結論付けた。しかし、日本の奨学金はローン型が中心であり、卒業後の返還が義務付けられるから、低所得層の学生のみに本人負担が偏っているという問題もある。
- 日本教育学会の論文
- 2006-09-29