環境倫理学概念の再構築 : ハンス・ヨナスを中心に
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿は、環境問題を引き起こす集団的行為をコントロールするための倫理学的アプローチを考察するものである。従来の環境倫理学は損傷を受ける側の自然を倫理的共同体に組み入れようとしてきた。しかし自然そのものが倫理的に振る舞うことはありえない。従って、本稿では集団的行為そのものにおける倫理的行為者の理念形成が試みられる。ハーディンは行為者が自己利益の最大化を目指すものと規定するならば、集団的行為に関わる道徳が放棄されざるを得ない、と主張する。しかしそれは環境問題の解消と言う目的のもとに生じる犠牲者を、やむをえないものと正当化することを意味する。一方、ヨナスは「未来倫理」の命法に基づき、将来世代に対する我々の義務と、未来倫理を通して真に守られるべき「人類の理念」を明らかにする。さらにヨナスは、行為主体を未来倫理が課す責任を履行し、かつ独力では存し得ない責任対象に対して応答するものと規定する。この主張を参考にして、義務を負う能力に応じた責任の分配こそが環境倫理学における真の課題ではないかと問題提起がなされる。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2003-09-18