医療事故発生頻度及び事故防止対策の現況に関する調査研究
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概要
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病院内における医療事故の発生頻度と事故防止対策の現況について、愛知・岐阜・三重の200病院に郵送無記名アンケートを行い、54病院から回答を得た。その結果、患者に危害が及ばなかったもののヒヤリとしたりハットしたニアミス、いわゆる「ヒヤリ・ハット」事例の件数についての回答は、過去1年間で、1病院あたり平均257件、医療行為中のエラーにより患者に障害を与えた医療事故件数は平均0.6件、患者が死亡した医療事故件数の回答は平均0.1件だった。しかし、これらの回答については、「医療ミスかどうかの解釈は、医療側と患者側で食い違うことが多い」「用語の定義があいまいである」などの書き添え指摘があり、あくまでも回答にあたった医療者側の見解による医療事故件数である。また、病院内に、医療事故防止のために活動する専門の組織を有している病院は、79.6%だった。一方、回答のあった54病院で、過去1年間に発生した患者の障害、死亡に至った医療事故は、計35件で、このうち、行政機関に報告されたのは、わずかに4件だった。しかし、一般論として、行政に報告すべきかどうかをたずねた意識調査では、80%が、報告すべきであると回答し、事故情報を個別病院で処理するだけにとどめず、行政機関を通じて集約・分析し、社会全体で情報を共有することにより、医療事故防止対策が社会政策として推進されることを期待する欲求が高いことがうかがえた。そして、現状で行政機関へ報告しにくい理由として、報告すべき医療事故の定義・程度の基準がなく、報告する行政窓口も整備されていない等の指摘が寄せられた。
- 2002-09-17